知られざる知財管理部門

昨日書こうと思っていたのですが、思ったより長くなってしまい日をまたいだエントリになりました。

知財管理部門に在籍したときの話です。約3年間マネージャとして業務に当たりました。自分以外は女性が大多数(半数が時短のワーキングマザー)という状況で知財の権利化部門にいたときとは全く異なる経験をさせてもらいました。

日々のルーチン業務としては知財年金や中間処理の期限管理、特許事務所や年金管理会社とのやりとり、事業部の知財担当者(いわゆるリエゾン)との連絡(ワークフローを含む)、知財の報奨金の算出と支払業務などがあります。例外はありますが、基本的にこれらは比較的業務量が安定していて、完了するまでの時間もほぼ正確に読めるので、時短の女性で回せるようにしました(というか、自分が来たときからそうなってました)。

イレギュラーな仕事は多すぎて書ききれませんが、例えば、知財管理ソフトのメンテナンス一式(バージョンアップ対応、新規導入時の選定と導入)、他社から知財を入手したときの権利移転や管理ソフトへの登録業務、国税査察時に経理部門からの要求に応じて必要な情報をタイムリーに提供、省庁や知財協(JIPA)からのアンケート対応、株主総会の想定質問対応等など。要するになんでも屋ですね。基本的にはイレギュラー業務は私が指揮をとり、必要な人材を集めて対応しました。(国税査察やアンケート、想定質問等は一人で対応してしまいましたが)

中でも大変だったのは別会社と統合した時のデータ登録作業だったように思います。業務開始の期限が決まっている中、全く異なるデータフォーマットの統合、送られてきたキングファイル数百冊の段ボール箱(中身はホッチキスやクリップ止めされた紙ファイル(CAD図面が入っていてサイズがバラバラ))から案件ごとに電子化して包袋登録(当然OCRの透明テキスト付き)。期間限定で派遣社員を雇用し、外注も利用しつつ、なんとか予定通りのタイミングで業務開始できました。

どの仕事でもExcelは非常に重宝しました。パッケージの管理ソフトでは完全に実業務とのギャップを埋めきれないので、そこを埋めるのがExcelです。パッケージの管理ソフトでは複雑な条件での抽出ができないので、いったんExcelに全データを落として、vlookupでデータを引き当てたり、オートフィルタを駆使して必要なデータを抽出していました。JIPAの研修などで色々な会社の人とも話をしましたが、同じような会社が多い印象です。

イレギュラー業務はまさにExcelの独壇場。マルチディスプレイに複数のExcelシートを表示して朝から晩まで作業にあたりました。以前開発部門のときにVBで制御システムを作ったことがあり、同じ命令形態のVBAでのマクロ作成もそれほど抵抗ありませんでしたので、使い捨てのマクロもずいぶんつくりました。特にうまくできたかな、と思うのは電子包袋登録時に、包袋電子ファイルの名称を管理パッケージが認識できる整理番号を含むフォーマットに変換する作業です。まずマクロでフォルダ内のファイル名をすべて取得します。マクロ作業はこれだけ。Excel上で別のシートにある登録リストと引き当てて番号が正しいことを確認し、その後、文字列関数を組合せて変換後のファイル名を生成し、変換前後のファイル名のリストをテキストファイルで保存。ここは手作業ですが、慣れれば時間はかかりません。その後、同じフォルダ内のシェルスクリプトのバッチ(RENではなくCOPYを利用)で一気にファイル名を変換するという手順です。少々マニアックですが、マクロをメンテできないメンバーでも作業できるよう、マクロ利用は最低限にしました。

また、ご多分に漏れず、働き方改革の話がきたときに日々のルーチン業務をRPAで行うことも検討したのですが、外部システム同士のデータやりとりが非常に少なく、ほとんどがExcelの処理ですんでしまうことが判明したため、Excelのマクロで自動化をすすめるべきという結論でRPAでの採用は見送りました。RPAでもマクロも実は根本的な業務の解決にはなっておらず、問題の先送りである点は同じです。

管理部門にいた期間は3年弱であまり長くありませんでしたが、とても良い経験になりました。この間に書いた稟議書は約120本になり、一つ一つのタイトルを見るにつけ、行った様々な業務が思い出されます。また、特に印象深かったのはメンバーの優秀さです。あれだけExcelを使いこなして、必要なデータ処理ができる人材は知財部門にはほとんどいませんでした。知財部門はWord使いが多くてExcel使いは珍しいので・・。

どちらかというと知財部門は権利化や知財を活用する部門に光があたり、管理はできて当たり前、と考えられがちです。それは間違いで、車の両輪のように双方がうまく噛み合って初めて知財業務が前に進むことを忘れないようにしたい、と思います。

管理から情報分析にうつって2年になりますが、Excelのスキルはたいへん役立っています。特に特許情報の検索システムは過去の経緯を引きずっているためか、なかなか番号フォーマットが統一されない状況にあり、Excelを利用して変換することが必須となっています。当面はExcelがなくなることはないと思いますので、スキルのブラッシュアップをしていきたいと思います。

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近況報告

ごぶさたしております。9年ぶりですが、ココログさんはまだ無くなっていなくて無事にログインできました(niftyのメールを利用しているため毎月金を払っていたこともありますが)。書き込みをサボっていた9年の間に知財権利化→知財管理→知財情報分析と仕事の内容が変わりました。

情報分析は新しく学ぶことばかりですが、思っていたよりも性に合っているようです。気が向いたときに更新していこうと思っています。

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[書評] インビジブル・エッジ

久々に書きます。昨年知財関係者の間で流行った本ですが、ようやくちょっと前に読み終わりました。Amazonのレビューにも投稿しておいたので内容と全く同じですが・・。

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先日GoogleがMotorola Mobilityを約1兆円で買収するというニュースが流れた。Googleの目的は色々と取りざたされており、Google自身もAppleのように携帯電話製造に乗り出すのではないかと見る向きもあれば、Androidのプラットフォームに参入しているパートナー企業の携帯電話メーカーを訴訟の脅威から守るために、Motorolaの保有している特許を入手したに過ぎないという見方もある。

このインビジブル・エッジを読んでいる最中だったので、このニュースに接したとき、Googleの狙いは後者以外にないと思った。なぜなら、物づくりをしている企業はそれだけで弱みを抱えているからだ。すなわち、携帯電話メーカーであれば、規格にからんだ必須特許を使わざるを得ず、強い交渉力を得ることができない。

この本では、物づくりを行なっている企業のことを、中から外に向けて石を投げることができないので「ガラスの家」と読んでいる。これに対して、イノベーションに注力して有効な特許を持っていながら物づくりをしていない企業を「サメ」と読んでいる。このサメ型企業の典型はQualcommであり、物づくりをしている企業に対して強力な知財による交渉力を有し、莫大なライセンス料を得ている。

Googleはもともと物づくりをしていなかったので、強い特許さえ手にすれば、Qualcommのようにサメ型の企業となることができる。それに対して、AppleやMicrosoftなど、Android陣営に対して攻撃を仕掛けてくる相手は、物づくりをしている以上、「サメ」ではなく「ガラスの家」に過ぎない。したがって、物づくりをしていないGoogleが知財という武器を手にすれば、すぐに優位な位置に立つことができる。Googleがこの有利な立場を捨ててまで物づくりに固執することは考えにくい。

なお、このレビューを書く直前の9月7日に、Androidのプラットフォーム上でAppleと訴訟を繰り広げている台湾のHTC社に対して、今回Motorolaから得た特許を含む9件の特許を譲渡している。これは、最前線で戦っているHTCに対して、強力な武器弾薬を補給したような形となっており、先に述べたようにGoogleは特許をAndroidのプラットフォームを訴訟の脅威から守るための盾として利用していることが明らかだ。

インビジブル・エッジという題名からは、「見えない刃」という言葉を連想するが、このエッジという言葉は「競争優位」という意味もある。上述したGoogleの例にもあるように、現在は見えない武器としての「知財」をどのように利用するかでめまぐるしく競争戦略上のポジションが変化する時代である。この本の著者はBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)において経営戦略の研究を行ってきた人達であり、ポーター教授の「競争の戦略」の内容を踏まえ、業界の競争環境を分析するフレームワークであるファイブフォースの中における知財の占めるポジションについても明確にした上で話を展開している。それゆえに、話の流れも明確で極めてわかりやすい。従来よくあった知財関係者による単なる思いつきや事例紹介の本とは一線を画していると感じた。知財関係者に限らず、経営に興味のある方々であれば、決して読んで損はない本だと思う。

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